底辺感覚自慢

先々月末に会社で飲み会があって、まあ悪い酔い方をしてその後一ヶ月ほど内省にふけっていたのだけど、そのときの酔い方と言うのが一言で言うとあたり構わず泣きじゃくったと言う奴なので、向こう三年は会社で話のネタになること請け合い。
で、今日もその件で上司Aにからかわれていたのだが。


「お前、あの時『俺だって頑張ってるんですよ』とか言って泣いてたな」と全く身に覚えがないことを言われたので反射的に否定する。言動ではなく、泣いたこと自体を否定したと勘違いされて「泣いてただろうが。『皆さん頑張ってるけど、俺だって頑張ってます』(酷い台詞だ)とか言って」とさらに言われる。面倒くさくなったので適当に肯定したが。


自分は社会人になってから、一度も「自分は頑張っている」と思ったことがないので、絶対にそんなことを言うはずがないのだ。(周りに苦労自慢のつもりで「辛い」とか「疲れた」とかはしょっちゅう言うけど)て言うか、本音では真剣に仕事がどうでもいい。一切やる気がない。褒められればそりゃ嬉しいが、努力してまで評価してもらおうと言う気が全く起こらない。こんな性格で、この先大丈夫かと漠然と心配はしているが。


とにかくそんな性格なので、「自分が評価されていない」とか「努力が報われない」とか言った理由でストレスを溜め込むはずがないのだ。「俺だって頑張ってます」なんて言う筈が無い。
追及された時に諦めて肯定したのは、「俺は一度も頑張って仕事をしたことがないので、そんなことをいうはずが有りません」なんてことは流石に言えなかったからだ。


あの時爆発した理由は別にあって、自分の持つ、他人に否定的な感情を持つことを極端に嫌う習性が発端となっている。多分現代病。
人の悪口は極力言わないし、そういうことで他人に同意を求められても出来る限り肯定しないようにしている。
結局は上に書いた性格に起因するのだろうが、他人を低く評価すると、その後に来る「じゃあお前はどうなんだ」と言うカウンターにほぼ100%打ち負けるのだ。このカウンターは他人よりも、主にセカンド自分から放たれる。
この精神ダメージの事前回避のために、絶対に自分からは攻撃を仕掛けない。そうやって自分は心の安定感を保っている。


なので、基本的に陰口とか、他人の失敗談とかは聞いているだけでストレスが溜まる。割と腹芸の好きなのが多い会社なので、派閥的な物も多い。上手く立ち回って距離を置ければいいのだが、仕事の性質上それが出来ないことも多い。
今回爆発したのは、約四ヶ月ほど続いた「上司Aから先輩Bの駄目なところを説明され、先輩Bから上司Aの性格的欠点を愚痴られ、それぞれに同意を求められる」という精神的板ばさみ状態に耐えられなくなったからだった。厄介なことに、自分は上司Aも先輩Bもそれなりに好きだったので、どちらかの側に立つということが表面上はともかく内心ではどうしても出来なかった。
で、飲み会と言えば陰口大会になることが多いので、どうしても会話に参加したくなくて飲んでばかりいたのが失敗だったのだろう。上司Aに泣きながら当り散らす結果になった。それで出たのが上の台詞の「皆頑張ってるけど」の部分。物凄い偉そうな台詞に見えるが、そんなつもりは無い。後半部分は絶対に言ってない自信がある。


自分があの時言いたかったのは、「あなたは先輩Bから悪し様に言われているが、俺はあなたを見て物凄く頑張っていると思っている。逆にあなたは先輩Bを悪く言うが、先輩Bも俺から見ると物凄く頑張っている。二人とも頑張っているのに、お互いに陰で軋轢があるのが、個人的に見てて物凄くもどかしいし、いらつくし、ストレスが溜まる」という事だった。果てしなく上から目線ぽくて偉そう。大体基本スタイル「頑張らない」な自分からすると、他人は皆凄く頑張っているように見えるので、高く評価しがちではある。


もちろん酔っ払っているとは言え、「あなた陰で嫌われていますよ」なんてことを面と向かって言う度胸は無いので、上の台詞の中で言えたのは「皆頑張っている」の部分だけだったというオチなのだが。後半もぼかして「なんか上手くいってないのがもどかしい」としか言えなかったし。


それであれだけ暴れまわって、最終的に上司Aには「俺だって頑張ってる」的な伝わり方しかしてなかったと言うことで、人と俺はままならんものよなあと内省モードに入りそうになった午後となったのだった。もう誰も、俺に話を振るな。